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コラム

「好きな映画」

「好きな映画をあげてください」と仕事柄よく聞かれる。洋画だと「ブルースブラザーズ」「ローズ」「ミッドナイトエキスプレス」…どうしても20歳前後の時に観た作品が中心になってしまう。これらの映画より、完成度の高い映画にもそのあと触れているハズなのに。

「心に残る映画」とは「どんな精神状態で、どんな時期に観たか?」によって決まるのだと思う。その頃の僕は丁度落語家を破門になり「今後の人生どう進めようか?」なんて考えながら全国を放浪していた。冬場スキー場でアルバイトしていた時にツアーのお客さんの前でギターを持って唄い始めた。

「音楽と笑いの融合を極めよう!」と決意した時期である。そんな中、たった一日の休みをもらって長野市内で観たのが「ブルースブラザーズ」だった。スクリーンではまさに「音楽と笑いの融合」が展開されていた。

「ほぉー、こんなやり方もあるんだ…」影響を受けた僕はその後、映画の中で唄われる「ローハイド」の替え唄で「ヤーさんヤーさんヤーさん♪」なんて唄ったりするようになる。「ミッドナイトエキスプレス」は監獄モノ。理不尽に捕まった主人公が最終的に脱獄するのだが、獄中の不自由さと精神的なストレスの描き方が印象に残っている。

師匠のお家を破門になりかかっている時期に観たのだが、今思うと、その時の僕は明らかに主人公に自分を投影している。内弟子生活と獄中を比べるなんて、いささか師匠には失礼であるが「なんとか脱出して自由になりたい」なんて思っていた時だったので、ラストの脱出シーンには心から涙したものだ。

感性が非常に敏感であり、しかも不安定で、様々な事を乾いたスポンジの様に吸収する時期に観たこれらの映画が、今後も生涯観た作品の上位を占め続けるだろう。


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