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コラム

「一文字連合」

人間なんてしょせん自分勝手な生き物である。この世に存在するほとんどのモノには名前があるが、どれもこれも人間の主観で付けられたものばかり。ま、動物は言語を使えないのでいたしかたない事なのだが「フンコロガシ」や「アホウドリ」や「ナマケモノ」や「バフンウニ」の心中はひょっとしたら大憤慨なのかもしれない。「オカメ」に似てるから「オカメインコ」、ウマみたいだから「ウマヅラハギ」じゃあ、あまりに見たまんま過ぎやすぜ。


 まだ、それらの名前らしきものが付いているヤツラはいいとして、気の毒なのは、たった一文字の連中。「蚊」とか「藻」なんて果たしてネーミングと呼べるのだろうか。

「あまりに存在感なさすぎるよなあ」なんて「蚊」と「藻」がボヤいているところに「ボクも仲間に入れてくださいよ」と「鵜」がやってきた。「せっかくとったアユを人間の都合で吐き出すなんていうハードワークの割に名前が軽すぎやしませんか?」「ワタシの立場も考えて下さい」「アンタ誰です?」「津です、県庁所在地ですよ。なのにこんな吹けば飛ぶような名前…」「おっしゃるとおり!」。そこに今度は「目」がやって来た。負けじと「胃」もやって来て人間のパーツ部門の勢いは止められない。「毛」「歯」や「身」までも名乗りを上げてドサクサにまぎれて人間には付いてない「尾」も末席に。


 そうなると自然界も黙っちゃいられない。「木」「根」「野」「火」「田」「菜」が加わると、こうなったらジャンルなんてカンケーねー!と「湯」や「絵」「戸」「間」「酢」「荷」も参戦。


 「我々一文字の単語の地位向上の為、一丸となって闘うぞー!」「みんなで『手』を取り合ってガンバロウ!」「そうだ!『輪』になろう!」「体制に『矢』を放ちましょう!」「世間との『差』をなくしましょう!」「プー」「誰だ!せっかくみんな団結の意志を固めている時に『屁』をこいだのは!」


 その後、犯人捜しでとっくみあいの大ゲンカ。とうとう「血」をみて「死」にいたるモノも出てしまい、全ての計画は「無」になったとさ。


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