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コラム

 

ケータイサイト「旨いもの伝説」に掲載していたコラムをアップします。


 第1回「八正の寿司」

 20年以上通っている寿司屋がある。僕が日本一好きな寿司屋。そこのおやっさんと気が合った。絵に描いたような頑固オヤジ。オヤジが立つ定位置がさながらコックピットの操縦席であり、客の皿、厨房の若手の板さんの一挙手一投足にまで目が行き届いていて、手際が悪いとキビシイ言葉が飛ぶ様子は見慣れた風景だった。そこにオヤジが居るという事で店としての全体のバランスが保たれていたし、お客も味は元よりオヤジに会うために足を運ぶような店だった。昨年久々に暖簾をくぐると、なんだか様子がオカシイ。店内の照明も暗い感じ、なんだか精彩がない。おやっさんが居なかった。おかみさんに聞くと、入院されたそうだ。不治の病。それから1年を待たずにオヤジは逝った。板さんから連絡をもらって、せめてお花でもと思ったがおやっさんの遺志で受け付けてもらえなかった。おやっさんがそこに居る事で持っていた店が、おやっさんを亡くしてやって行けるのか?先日様子を見に行った。そして目を見張った。活気づいている。おやっさんが居なくなった大きな穴を、おかみさんと若者達が埋めようと必死なのだ。花板さんが、かつておやっさんが居た場所に立ち懸命に仕事をしている。そこに頼もしさを感じる。厨房の若手達も、おやっさん直伝の教えを踏襲しイキイキ無駄無く動いている。フーム!おやっさんがなくなったのはとても寂しく悲しい事だ。しかしトップがすべて仕切って君臨している状況では「下」が育ちにくい。場合によっては萎縮してしまう。おやっさんよぉ!あんたが死んで店がどうなるか心配したけど、ちゃんと次の世代へのレールを敷いて逝ったのだね。これには驚いた。生前「雑誌にこの店紹介してもいい?」と何度も聞く俺に「それだけはカンベンして」と頑なに取材を拒否し続けたおやっさん。2年程前にどういう風の吹き回しか「アンタが書くんやったらええよ」とようやく言ってくれて、でもその時は俺、紹介するメディアを持ってなくて、今回ようやく書かせてもらったわ。店はよく流行っている。おやっさんが築いた礎の上に、新たな花が咲こうとしている。また大阪に帰ったら、おやっさんを偲びつつ旨い寿司を食いに行くでー!「タチウオのあぶりとカワハギの肝乗せ握ってー!」。

*情報
「寿司 八正(はちまさ)」
大阪市中央区上汐2-4-12
電話 06-762-3967
平日17時~23時
土曜16時30分~23時
日曜16時~23時
月曜定休


 第2回「紅蜥蜴の担々麺」

 今まであんまり「担々麺」について考えた事のない人生を送って来た。「担々麺食べに行こうよ!」と誘われても「えー?担々麺?まあいいけど…」的におざなりな返事をしていた俺が居た。それがどうだ?昨日も今日も舌と身体が担々麺を欲してその場所に足を運んでいる。なんとも不思議な店構えだなぁと感じて、そんな時はだいたい入って見る事にしている俺の直感が当たった。桜新町にある店の名前は「紅蜥蜴」。怪しいじゃないか!三島由紀夫作・美輪明宏主演の芝居は「黒蜥蜴」。そういえば美輪邸もここからそう遠くはない。「紅蜥蜴」の正式名称は「餃子荘 紅蜥蜴」。店内は細長く、一階奥が厨房で客は二階に通される。15人も入れば満員のイビツなスペースだ。大学ノートに毛筆で書かれたメニューが力強い。イチオシは餃子と担々麺らしい。両方頼むと、そのどちら共が今まで経験した事にないシロモノだった。餃子は細長く春巻きのような様相で、多めの油で焼くからか表面は揚げたようになっている。そして担々麺。俺はいままでこれほど複雑な担々麺を食った事がない。上空から確認出来るだけでも「ひき肉」「山椒」「鷹の爪」「松の実」「コリアンダー」「青ネギ」などが見える。そしてそれらを取りまとめる「ラー油」の海が美しい。スープに絡みやすい少し柔らかめの麺を引き揚げると液体とジェルの中間状のスープに様々な役者達が適度に絡んでくる。レンゲが2種類あるのもいい。ひとつは普通のレンゲでもう一本は穴がいくつか開いた金属製。数年前から札幌ラーメンのコーンラーメンを舞台に活躍し始めたヤツだが、担々麺にも有効である。食べ進むうちに味はどんどん変化を続ける。かつての「ウルトラQ」のオープニングの映像の様に、渦巻き、混ざり合いフィナーレまで一気に連れ込まれる(舌の上ではナメゴンやガラモンがのたうち回る)。コイツの正体を見極める為に、しばらく通う事になりそうだ。


 第3回「ビクトリーのサンドイッチ」

 サンドイッチを無性に食べたくなる事があるか?サンドイッチが出て来たら脇目も振らず無心にほうばってしまう事があるか?ノー!ノー!ノー!否!否!否!サンドイッチとはツナギの食であり、小腹が空いたときの一時しのぎで食べるケースが多かった。ところが、ここ「ビクトリー」のサンドイッチは本当に心底満足出来るとても素敵な食べ物なのだ。俺がこの店を知ったのはまだ大阪に住んでいた20代の頃。車で土佐堀通りを走っていると、なんともモダンな外観の喫茶店を見つけ、入ってみたら大当たりだった。先代がやっていた店だ。17年前からは近くに店を移し営業しているがその味はずっとオイシイ。先代が大正から昭和に変わる頃、洋食のコック目指して田舎から大阪に出て来て、生まれて初めて喫茶店に入り、生まれて初めてサンドイッチを食べ「こんなウマイものが世の中にあったのか!」と心底驚いて、修業の末に自分の店を始めたのが昭和3年。開店当時は3種類だったメニューも研究に研究を重ねて20種類以上に増え、戦争も乗り越え、今では先代の伝統を2代目夫婦がしっかり受け継ぎ、ビジネス街のみんなの舌を満足させている。イヤ、俺もね、先代の大将同様最初「ビクトリー」のサンドイッチを食べたとき「こんなにウマイもんがあるんかいな!」と思ったもの。以来大阪でライブがある時はテイクアウトで頼んだり(電話で頼んでおくのもOK)、先日もフラッと訪れてみると相変わらずのオイシサで、その日は「ビーフカツサンド」を無心に頬張った。種類が豊富なのでいつも目移りしてしまう。「カトルフィッシュ(イカ)サンド」「シュリンプヤサイサンド」「ローストビーフサンド」もいいな。こうして文字に記していると尚更、今すぐ食べたい「ビクトリーのサンドイッチ」に僕はずっと負けっ放しだ。


*情報
「ビクトリー」
550-0002大阪市西区江戸堀1-23-31

06-6441-4147
営業時間 平日7:00~19:00
     土曜8:00~17:00 日祝休


 第4回「ピカイチ」

 名古屋と言えば「ピカイチ」だ。もう20年は通っている。「オリジナル中国料理」と言うだけの事はあって、ここにしかない味が充実している。ピカイチに似たような味にも全国的に出会った事がないのがスゴい!お気に入りは「ゴボウと細切り肉の炒め」歯ごたえジャキジャキ!香ばしく紹興酒にもビールにもよく合う。ここにしかないわー。「ピカイチ風冷シャブ」も、たまらんなあ。キューリと豚肉と味噌が三者で仲良く手をつないでいる。「大根と白肉の煮込み」もハズせんなあ。トローリとあんかけ状の薄切り大根と豚肉を取り皿に入れたらそこは「純白」の世界。そこに辛味噌を少々タラし「赤」を入れるとまるで日の丸!中華料理で「ニッポン、チャチャチャ!」。あとは「餃子」を頼んで、とにかく何を食べてもオイシイからメニューを見て興味あるのを頼みなさい!そしてシメは「チャーハン」と「ピカイチラーメン」。ラーメンは辛さが調節出来るので、少々辛めを頼んだ方がチャーハンと良く合うと思うよ。
 ドラゴンズファンが集まるという事でも有名で、中日が勝った日は大盛況!名物のオヤジさんが一昨年急逝されて、とても寂しいけれど、残ったオカミさんと息子さんでシッカリ店の雰囲気と味を守っている。名古屋に行ったら、とにかく「ピカイチ」。


* 情報
「オリジナル中国料理」ピカイチ」
〒464-0850 名古屋市千種区今池1丁目14-5
電話 052-731-8413
営業時間 18時~1時半 定休 毎週日曜日


 第5回「天國・上野店」

 熊本に行ったら必ず顔を出す「馬料理専門天國」。別格のその旨さの虜になって10年は過ぎたか。二年前いつものように「天國」に顔を出すと、オヤジさんが「今度東京上野に支店を出す事になりましたので、ひとつよろしく!」との事。こいつぁ、ありがたい!東京で最高の馬料理が味わえる!と、早速友人を誘って上野のお店に乗り込んだ。やはり、とてもオイシイが、いかんせん場所が西郷さんの銅像のすぐ横で、通常夜間は人通りが少ない。オマケに店が広く84席もある。その後も何度か通ったが、どうひいき目にみても「大繁盛」しているとは言いがたい。もったいないなあ、こんなに旨いのになあ、と気にはしていた。で、昨年またまた熊本に行った際、オヤジさんが「うちの姪を女将として送り込む事にしましたんで、ひとつよろしく!」との事。なんでも「ミス・インターナショナルのフォトジェニック賞」を過去に受賞した事のあるバツイチの40代だと言う。数ヶ月後友人を誘ってまたまた上野に乗り込んで目を疑った。かなり流行っている!店とは舵を取る人間によって、ここまで変わるのか!女将は水商売は初めてなのだが、伯父さんに頼まれ単身上野に乗り込んだものの、閑古鳥の鳴き声ばかりが響き渡る現状に「なんとかせねば!」と奮起。まずは熊本県人会に入るところからのスタートしたそうだ。名刺に記されたメールアドレスに心血注いだメルマガを送ったりしているうちに、その人柄とルックスに、いやモチロン以前からレベルの高い「馬」の品質にファンが激増!一年で店は活況を呈するようになった。めでたしめでたし。いかに「味」が良くともそれだけでは成り立たず、そこに魅力的な「人」ありき、という事を立証した女将の人柄に触れに、そして極上の「馬刺し」と「馬しゃぶ」に惹かれて俺はまたまた西郷どんを目指す。

* 情報
住所 〒110-0007 東京都台東区上野公園1-59 上野公園内
電話 03-3828-5664
営業時間  11:00~15:00(L.O.14:30)
      17:00~22:00(L.O.21:00)
定休日   月曜日 (祝日の場合営業、翌火曜日休)


 第6回「水餃子の店 ハルビン」

 大阪のJR茨木駅西口にある「水餃子の店 ハルビン」に、俺はデビュー直後から20年以上通っている。茨木は地元で実家があるので、今でも年に数回は暖簾をくぐる。「ハルビン」のカウンターに座ると「あー、帰って来たんだなぁ」と実感するのだ。数年前、創業者のオッチャンとオバチャンが続いて亡くなられ、とても寂しかったが、今は息子さんがシッカリ跡を継いでいる。先代が本場で習って来たという水餃子は、弾力ある皮に包まれ「トゥルン!」と口に入って来て、徐々にアンと皮が馴染んで、程よく食道に流れて行くのがオイシく楽しい。ニンニクをつかわないシンプルかつ奥深い味だ。「餃子」という種類の食べ物に中で「ハルビンの水餃子」は明らかに他より「品格」があると俺は感じる。イヤ、けっしてエラソウでタカビーなのではない。あくまで大衆的ではあるが、「オーラの泉」的に言うと「前世は貴族であり武士だった」みたいな餃子なのだ(どんな餃子や?でもそんなカンジ)。別格ちゅうこっちゃ。
 「豚肉とネギ炒め」も相当ウマイ。九条や下仁田などのブランドネギではなく「普通のネギ」に「普通の豚肉」なのだそうだが何故にここまで旨い?火加減なのかなぁ?調味料なのかなぁ?ここにしか無い味で「ハフハフ」で「シャキシャキ」で「ムニュムニュ」で紹興酒にとてもよく合う。あー、食いたい!今すぐ食いたい!地元茨木を代表する「水餃子の店ハルビン」に行ってみよし!水餃子は取り寄せも出来るから、食べてみよし!


*情報
住所 〒567-0032 大阪府茨木市西駅前町8-5
電話 072-623-2500
営業時間 火~土 18:00~24:00(L.O.23:30)
     日   18:00~23:00(L.O.22:30)
定休日 月曜日


 第7回「白馬 山太」

 スキあらば白馬に出かける。25年の付き合いの友人が、レンタルスキーの会社「スパイシー」を起こして20余年。今や9店舗、カナダにまで出店!スキー客が減少する中、大健闘していて、白馬に行きさえすれば冬はスキーに温泉、夏はパラグライダーにラフティング、秋には新そば、今日は旅館に明日はオーベルジュ、と完璧にアテンドをしてくれるのだ。あーありがたやありがたや。もう何十回出掛けたことだろう。白馬のメシ場も高級フランス料理から大衆店までほぼ把握しているが、去年初めて訪れて、つい先日も再び行って相当お気に入ってるのが「RESTAURANT&BARLU 山太(さんた)」なのだ。長野県産の食材にこだわっているのがとてもヨイし、築20年の本格的ログハウスは風格のある癒しの空間。冬場は暖炉の炎が目に優しい。和とイタリアンの創作料理はどいつもこいつも素材がいいやね。信州牛を代表するりんご牛(ほとんどりんごしか食ってないらしい)、信州サーモン、信州地馬、県内産合鴨、白馬村で採れた山菜や岩魚。それらをご主人が愛情込めて調理する。すべて手作り、添加物一切ナシ!ワインをはじめとしたお酒も充実していて、どの季節に訪れても、そのシーズン最高のものを食べさせてくれる。今回初めて食べてビックラこいたのが「ニジマス」のメスと「ブラウントラウト」のオスを交配し、約10年の年月をかけて開発された「信州サーモン」。クセがなくてとてもまろやか。こいつぁ、海のサーモンよりもウマイんでないの?キノコの数々も白馬ならではで、また冬はスキーをしに、そして「山太」にメシを食いに必ず白馬へ行くぞー!


*情報
ADDRESS 長野県北安曇郡白馬村北城836-125
TEL&FAX 0261(72)5539
OPEN TIME 11:30~25:00
CLOSE 火曜日(7月8月、冬季は無休)
HP http://www6.ocn.ne.jp/%7Esanta898/


 第8回「インデアンカレー」

 25歳の時に初めて食べてから20余年。我が青春の味であり、僕の中の「カレーランキングダントツ1位」の座が揺るがないのが「インデアンカレー」だ。関西に8つの直営店があり、大阪に帰った時は必ず食べに行っていた。最初は甘く、食べ進めるうちにどんどん辛くなり、食べ終える頃には頭皮から汗が吹き出す愛しのインデアンカレー。その58年の歴史を背負って2006年11月、ついに東京に進出。あーありがたやありがたや。これで日常的にインデアンカレーが食える!大阪にはすでに土着しているので、インデアンを食すマナーは定着していて、カウンターに座り、出て来たと同時に無言でさっさと食べるのが常識だが、東京のお客さんはけっこう談笑したり、ビールを飲んだりしながらユルユル食べる姿が新鮮であり興味深い。俺はいつも「ルー大盛り、ごはん少なめ、卵」と注文。そんなのメニューに載ってないので、何度か通って自分の好みの量を把握してからいろいろ試して見るべし!「ルーダブル」とか「スパ大盛り」とかいろいろあるからねえ。20年以上通っている俺ですら、最近知ったのが「全卵(ぜんらん)」。通常「卵」と頼むと黄身のみが乗っかってくるのだが「全卵」は白身も込みで出て来る。辛さが苦手な人は「全卵」で行こう!今までにいろんなところにインデアンカレーの事を書いたし、数百回は食べていると思うが、こうして今、原稿を書いていても、その特別な味を思い出し、今すぐ食べたくなる。今から行ってこよう!行くしかない!

*情報 丸の内店 東京ビル TOKIA B1
   03-3216-2336


 第9回「デミカツ丼」

 日本一のカツ丼は岡山にある。40代に入った頃からめっきりカツ丼を食う回数が減った。天丼も含めて、出来るだけ「揚げ物」は避けよう!という志向の「食」を選びがちな毎日。しかーし!「だてそば」のカツ丼だけは別格で俺の舌とハートを離さない。おそらくこれからもずっと、老人になったとしても。もう15年以上、岡山に行くと気づいたらカウンターに座っている俺が居る。通常、カツ丼とは、カツとタマネギなどを卵でとじてモノが、ご飯に乗っかって来るモノである。群馬や新潟にはカツとキャベツの上にソースがかかって出て来る「ソースカツ丼」もある。俺が日本で一番好きな「だてそば」のカツ丼はデミグラスソース。え?ドミグラス?いやいやデミグラスの方がシックリ来る。カリッと揚げたてのカツにからんだ香ばしいデミグラスソース。通称デミカツ丼。真ん中に卵を落として食べる。なんちゅう旨さだ!「だてそば」の名前でわかるように中華そばも名物で、これがまたウマイ!両方食べたい人には、それぞれの「小」のセットもあるし、カツ丼は普通で中華そばが「小」、中華そばが普通でカツ丼が「小」という選択も出来る。先代の名物ばあちゃんからしっかりバトンを引き継いだ「かあちゃん」の明るい人柄に惹かれて店に通う常連は星の数。そこに「かあちゃん」が居て、かあちゃんの手によってカツが揚がり、中華そばが湯がかれる。カウンターの中のかあちゃんは、とても神々しい。ここにもやはり、しかるべき「人」が居て、しかるべき「味」が根付いている。


*情報
「だてそば」
住所 岡山市表町2-3-60
電話 086-222-6112
営業時間 11:30~19:00(L.O)
土日祝 11:30~19:30(L.O)
定休 火水


 第10回「白トリュフとふぐ白子」

 白トリュフとふぐの白子のコラボレーションって、あーた!東京はおそろしか、とこよねえー。世界中でこれほど贅沢な食べ物がありますか?しかも白トリュフとふぐの白子がともに旬の41日間しか食べられない。あー!オソロシ!あー!たまらん!
 「浜藤」のオーナー乾さんは、食に関しての研究熱心さと言ったら並大抵ではない。元々「串の坊」の三代目という立場にあるのだが、22年前に大阪を離れ、東京の人に「ホンマにウマイてっちりを!」の志を抱いて上京。最初の数年は店に閑古鳥カーカー鳴くも、その後一気に盛り返し、今や日本を代表するふぐの名店に。乾さんとは同郷(大阪府茨木市)という事もあり、六本木出店時からチラホラと通ってはおりましたが、ここ3年ほどさらに急接近で、みんなで食事をしたり、バルセロナやソウルに「食旅行」に行ったりの仲。昨年は俺、下関・門司地区のキャンペーンキャラクターを担当していて、イメージソング「カモン!関門行進曲」(非売品)というのを作ったワケ。その歌詞はトルコ行進曲に乗せて「ふぐ食べよ!ふぐ食べよ!・・・・」というモノ(下関だけに)で、せっかく「ふぐ関連」の唄が出来たのだから「乾さんにもプライベートの『遊び』で『浜藤てっちり行進曲』作ってあげますわ!」ということで、まんまカラオケに「浜藤」に関する様々なこだわりを乗せて唄に凝縮してみたよ。
 さあ、今シーズンも行って来たよー!白トリュフとふぐの白子、今年は「イラン産天然キャビア」もあるでー!それに良く合うシャンパンや白ワイン!あー!あー!これは「王様の食べ物!王様の飲み物!」この世に生まれたシアワセ!東京の街でこれらのモノを口に出来るシアワセを噛み締めながら、六本木の夜は更けてゆくぅ~!(しょっちゅう食べたら人間ダメになるよ)

*情報
住所 〒106-0032
 東京都港区六本木7-14-18 7&7ビル2F
最寄駅
 地下鉄日比谷線 都営大江戸線六本木駅 徒歩1分
TEL 03-3479-2143
営業時間
 12:00~23:30(ラストイン22:00)
定休日
 シーズン中無休(12/31~1/2迄を除く)
  ※4月~9月は天然ふぐシーズンオフの為休業


 第11回「禁断のカニとの再会」

 20代の頃からカニが好きで、自分の金で食えるようになった事も嬉しく、ひたすら食べ続けて15年ほど経った時「カニを食べた時に限って体が錦鯉みたいにマダラになって心臓が少しドキドキする」と気づいた。お酒と共にに甲殻類を食べるとそういう状態になるのだとようやく自覚したのだ(するのに時間がかかったー)。以来カニとは距離をおいてきた。口にしなくなってからもう7~8年だ。さて先日、旅番組で「冬の城崎温泉の旅」という仕事が入って来た。え?これはカニを外すワケにゃーいかないシチュエーションではないか。ま、お酒を飲まなければ大丈夫!と、おそるおそるやって来たのは5万坪の庭園を誇る名宿「西村屋ホテル招月庭」。客室から眺める奥行きある風景が素晴らしく、ロビーから見える滝の表情や、露天風呂に身を沈めた時の視界、そのすべてが計算し尽くされており、俺も「庭に感動する年になったか!」と思いつつ湯につかりながらカニとの再会の時を待つ。
 さて、膳に現れたのは地元津居山港に水揚げされた見事な松葉ガニの王様。本当に久しぶりのご対面なのだ。まずは茹でガニの足に強引に指を入れ身を分離させ一気にほおばる。おっ、おー、懐かしい。あー、こんなんだった。ウ、ウマイ!数年遠ざけていた反動か、カニの魅力にどんどん吸い込まれてゆく。カニミソってそうそうこんなんだった!刺身はこんなふうにプリプリしてて、カニスキはこうだったハフハフッ!焼きガニは香ばしく、また全然風味が違う!料理法によって表情が七変化!ムシャムシャムシャムシャパクパクパク!酒さえ飲まなきゃこっちのもん(どっちのもんや?)。昔の恋人と再会した気分だ(少しエロティック)。そしてやはりコヤツは相当魅力的な食べ物で、多くの人を虜にするのがよーくわかった。もう、どうにでもしてー!冬の山陰に人が押し掛けるのは道理だ。

*情報 西村屋ホテル招月庭
住所:〒669-6101兵庫県城崎温泉
TEL0796-32-3535 FAX0796-32-4457
http://www.nishimuraya.ne.jp/shogetsu/index.html


 第12回「新大阪・新横浜の定番駅弁」

 元々は関西中心に活動していた。15年前まで大阪にも部屋があり、東海道はもう何百往復したか数えきれない。食事もままならず新幹線に飛び乗る事も多かったので「駅弁」は貴重な一食となる。新大阪で売っている駅弁も、ほとんど食べ尽くしているが、今までもっとも多く食べた駅弁と言えば「水了軒の八角弁当」だ。この幕の内のバランスの良さは日本一で、食べていてとても楽しい。関西の味付けなので、どれもこれも薄味で素材の良さが生かされている。20種類近い「オカズ」を少しずつ味わいながらご飯を食べる。ご飯もオカズも「冷めている状態」でオイシク食べられるように計算され尽くしているのがウレシイ。20代の頃に初めて食べた時のイメージをずっと継承していて「駅弁を食べる」という行為が「あの頃を振り返る」という思いをも引き出して、進行方向左手に望む北大阪の山々の景色に四季を感じながら、今日も「八角弁当」を口にする。
 反対に東京から大阪に向かう場合。以前は東京駅のデパ地下で弁当を買う事が多かったが、近頃は新横浜の駅を利用する場合が多いので新横浜と言えば「崎陽軒」という事になる。ここの弁当もほぼ制覇しているが、俺のナンバーワン駅弁は「横浜チャーハン」だ。シウマイ(シューマイではなく崎陽軒の場合あくまで「シウマイ」と表記)が2つ入っているニクイ奴!冷めたチャーハンの飯粒の状態がとてもドライで食べていて心地がヨイ!第三京浜の港北インターを降りる頃になると無性に「横浜チャーハン」が恋しくなる。スプーンで食べるのも楽しいし、量的にも少し少なめで程よく、小田原あたりまで至福の時間を過ごしている。


 第13回「下田・いし塚」

 そば屋には「フラリ」と入るものだ。計画性なくあくまで「フラリ」と入り、そばをたぐって長居をせずに勘定をして「スルリ」と店をあとにする。そんな店が何軒かある。中目黒の「驀仙坊(ばくざんぼう)」、学芸大の「夢呆」、恵比寿の「玉笑」、白金の「利庵」、地方に行ったら行ったで信州白馬の「そば祭り」の時期の新そば、山形の「板そば」、新潟じゃ「へぎそば」、山陰は「出石そば」、いつも「フラリ」と入って「スルリ」と出てくる。伊豆下田にここ数年ちょくちょく遊びに行くのだが、ここでは「いし塚」。最近は大晦日に行った。一年で一番そば屋が混む日なのだが、午前中に滑り込んだので、そんなに待たずに済んだ。ウマイのは「せいろ」「そばがき」「上鴨そば」。冷たいそばはコシがあり、率先して喉をくぐり抜けるカンジ。俺は、暖かいそばというモノに今まであんまり興味を示さずに生きてきたのだが、ここの「上鴨そば」は別格だ。芳醇で包容力あるダシに、力強く、でもやさしい「鴨肉」と「ネギ」が浮かぶ。そこに独自の調合の「七味」を振れば、なんとも複雑でシアワセな味覚が果てしなく絡まりつつ広がってゆく。東京から3~4時間、下田につけばまず「フラリ」と「いし塚」の暖簾をくぐりたい。

*情報
いし塚(いしづか)
下田市敷根4-21
0558-23-1133
定休 水曜日
営業時間 11:00~16:00


 第14回「澤屋まつもと」

 長年「日本酒」の良さが理解出来なかった。と言うより、若い頃、安い日本酒をムチャ飲みしてヒドい目にあったという印象から脱却出来なかったのだ。でも数年前から「日本のメシにはやはり日本酒だ!」と、ようやくここにたどり着いた。吟醸酒や純米酒、生酒などの違いもわかるようになってきたし、俺も大人になったモノだ(シミジミ)。酒単体としては、大吟醸など魅力的なモノは多々あるが「料理を引き立てる」という意味において「澤屋まつもと」をしのぐ「酒」に出会った事がない。けっして前面には出てこず、食事を生かす最高の日本酒なのだ。京都伏見で創業以来200以上の伝統のその味。揺るぎない自信を感じる。現在の「まつもと」の後継者「松本兄弟」の三男「松本庄平」さんは料理人で、横浜に居を構え「まつもと」を全国に広めるべく「企画室長」として全国を飛び回っている。「和」の料理人なのだが、松本さんの作る「スッポン鍋」には定評があり「まつもと」を広める目的で互いの気心ヨシ!となれば出張で腕をふるってくれる。かつては「日本の電気産業の父」と呼ばれた人や、様々な名作を世に送った「映画監督」なども松本さん御用達で、何度も自宅に呼ばれたそうだ。そんなスペシャルなスッポン鍋を年に何度か口にする機会があるのがありがたい。俺も大人になったモノだ(もうええか)。スッポンのスープに「まつもと」を流し込みクイッとやれば「あと100年くらいは生きるぞ!」という気になってくる。


*情報 ホームページを見れば一目瞭然
http://www.sawaya-matsumoto.com/


 第15回「月ぬ美しゃ」

 デビューしたての頃は、まだ大阪に住んでいて東京に出てくる時は「戦い」の様相。「負けへんでー!」という気概で仕事をこなし、終ったら気分は旅人で「どこで何して遊んでやろう?」という気満々だった。定宿も花の六本木のホテル。当時の事務所御用達の「カリフォルニア」という洋風酒場は交差点のすぐそばにあって、先輩の桑田さんやさんまさんがよく来ていた。馴染みの薄い東京において、その店の居心地が良く、マスターの優しさに甘えにしょっちゅう顔を出していた。あれから20余年、駒沢通りを通るたびに、その「八重山そば」と書かれたのぼりが気になってはいた。近くに駅もなく、不便な場所なのだが深夜まで賑わっている一見バラック風なそのお店。出来て1年くらい経った時、友達と不意に入ってみたらご主人が人なつっこそうな表情で「達っちゃん!元気!」。ん?どっかで見た顔だ。「だ、誰?」「ホラ!六本木のカリフォルニア!」「あっ!あーーーー!マスター!」という再会をした。六本木時代に沖縄出身のミュージシャンもよく店に出入りしていたので、その関係を生かして本格的な八重山そばの店を駒沢に出してもう2年半。お酒は泡盛がズラーッ!と揃っており「ポーク玉子」や「ゴーヤチャンプルー」も本場の味だ。そばは、かまぼこと共に石垣から航空便で取り寄せ、出汁は東京流にアレンジ、ミニサイズもある。ランチタイムも営業していて「ミニそばとポーク玉子おにぎりのセット」が630円でオススメ。夜は引っ切りなしにお客がやってきては泡盛を飲んでいる。この集客力は一体何だろう?六本木時代もいつもお客が入っていたし、マスターの「わらさん」の独特の魅力というか、その居心地の良さをかもし出す人徳に触れに人が集まって来るのだろう。石垣出身の人間をも虜にする八重山そばの味とやさしさ溢れる雰囲気を味わいに、今日も深夜まで活気が溢れている。

*情報
住所 世田谷区駒沢5-15-3
電話 03-3704-5089
営業時間 ランチタイム 11:20~14:30 日月定休
     ナイトタイム 18:30~3:00


 第16回「赤のれん」

 好きなラーメンをひとつ挙げろ!と言われても、それは無理な話だ。体調や気分によって、食べたいラーメンは変わってくるし、地方に行ったら行ったで「来たからには食べとかないと!」という思いで店に足を運ぶ事もある。
 今まで、歩んで来た道と、そのかたわらにあった味というのも重要だ。例えば俺は20代前半の頃、よく京都のライブハウスで唄っていて、リハーサルが終ると「天下一品・北白川本店」に行った。なんという旨いラーメンがあるのだ!と驚いた。あの、ドロッとした白濁したスープは、青春の味なのだ。まだ「ナニモノ」でもなかった俺が「ナニモノ」かになりたい!と強く願いながら口に運んだ「夢に向かう切符」的な役割りを果たしたラーメンなのだ。今や全国展開している「天下一品」を時々体験する事によって、初心に帰る事が出来る。
 20代後半、東京でテレビのロケ番組を担当していた時、ロケ帰りにラーメン好きのディレクターにいろんな店に連れて行ってもらった。その中で速攻気に入り、あれからずっと通い続けているのが西麻布の「赤のれん」だ。博多の本店でラーメンの作り方を教えてもらって、東京に店を出して、もう30年になるのだという。西麻布を「霞町(かすみちょう)」と呼んでいた時代から、ずっとそこにあるのが凄い。30年の間、変わりゆく風景を見続けて来た風格。揺るぎのない自信を感じる。このトンコツは記憶に残る味で、界隈を通ると「赤のれん」のラーメン食いたい!という思いが脳裏をよぎり、払いさる事が出来ない。博多の極細の平打ち麺なので、茹で時間も短く、グズグズ食べているとすぐに伸びてしまうのもイイ。こうして原稿を書いていても「赤のれん」の味を思い出し、腹がグゥ~と鳴るのが旨い証拠だ。

*情報
住所:港区西麻布3-21-24 第五中岡ビル1F
電話:03-3408-4775
営業時間 11時~翌5時
日曜定休


 第17回「七宝麻辣湯」

 辛いものが好きだ。脳天から汗が吹き出すような。しかし趣味の悪い辛さはイヤだ。深みのある辛さを求めて、日夜街角をさまよう俺がいる。
 そして、理想に近い辛さを見つけた!場所は渋谷の桜丘。坂の中腹に「七宝麻辣湯(チーパオ・マーラータン)」はあった。まだ出来たばかりの店で、上海直送のスープ春雨の店。メインは春雨と白湯スープ。具材を自分で選んでカゴに入れて店員さんに差し出すと「辛さはどうしましょう?」と聞かれる。0~5の6段階の中から辛さを指定する。全く辛味の無い白湯の0、ピリ辛の1、オススメは中辛の2、やみつきになるのは大辛の3、思わず口から火を吹く激辛の4、1度はチャレンジしたい極辛の5。一回目は3にチャレンジ!具材は「フータマ(上海のもので、麩を揚げたようなモノ。スープを吸ってフニャッとなるのがたまらん!)」「豚肉」「ニラ」「水餃子」にした。赤く染まった丼に期待しつつ、レンゲでスープをグビッ!ウン!辛ウマ!具材からもダシが出て、シナッとした春雨によくカラむ。フーッ!!アチッ!カラッ!ズルッ!額から汗が流れる。ヒーッ!ホーッ!食べ終えた充実感を胸に、坂を登って駐車場へ。あー、カラッ!でもウマイ!
 2日後に2度目の挑戦。「フータマ」「白菜」「魚のすり身の団子」「トマト」をトッピング。今度は4だ!丼はさらに赤い!オオッ!こ、これはっ!ウマいが、、、ちょっとばかし、いくらオレでも、エーーーーーン!!!這いずるように駐車場へ。
 さらに三度目、「フータマ」「トマト」「岩のり」「ニラ」を入れて辛さは3。3が俺には丁度いい。トッピングを毎回変えられるので、何度行っても飽きない。卓上の山椒が、これまたシビレル!心地よいシビレ!スキップしながら駐車場へ。
 上質の辛さはクセになる。渋谷を車で通るたびに、寄ってしまいそうだ。


*情報
東京都渋谷区桜丘町15-18北沢ビル1階
03-3780-0066
営業時間11:30~15:00、17:00~23:00


 第18回「かっぱ」

 今や「駒沢」と言えば高級住宅地。「コマザワンヌ」と呼ばれるセレブが、犬を散歩させている、というイメージが定着している(実際本当に犬を連れている人が多い。犬同伴で入れる店や、犬グッズの店が軒を連ねている。日本一『犬密度』の濃い地域かもしれない)。しかし、元々は田園地帯だった。1964年のオリンピックによって、一気に様子が変わったのだ。オリンピック開催から、さらに遡る事14年、「かっぱ」の歴史はすでに始まっていた。牛肉の煮込み一筋57年。当時、今の246は路面電車の「玉電」が走っていて、最初は、多摩川の砂利を渋谷に運ぶ為に敷かれた線だった。その時代から流れる「かっぱ」の伝統。近くに駒沢大、日体大があるので「青春の味」として記憶に残っている人も多いだろう。「よく、先輩に鍋を持たされて買いにいきましたー」という声を良く聞く。あくまで「モツ」ではなく「牛肉」の煮込みだ。コンニャクと豆腐に絡んだ味噌ベースのその味を、ひとたび思い出したら食べずにはいられない。気付いたらカウンターに座っている。店内で私語を交わす人は居ない。3交代制の「二代目オヤジさん」「おかみさん」「三代目息子さん」の所作に無駄は一切なく、黙々とメシをよそい、煮込みを注ぐ。客はひたすら煮込みをおかずにメシをかっ食らう。「コマザワンヌ」にゃー、似合わない。「男の世界」ンー、マンダム!
 そんな緊張感が窮屈な人は、タッパーでのテイクアウトもやってくれるので、裏口から「3人前!」などと注文して、持って返って、家でワインでも飲みながら味わうのもヨシ。


*情報はすべて以下のサイトに
http://nikomi-kappa.com/index.html


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